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阿武北スパイラル!

今日は非番、お休みだ。
特に予定も無い一日の始まりは惰眠を貪ってしまう。
特に二度寝をする瞬間は至福の時だ。
しかし休みだからといって怠惰な生活をしてはいけない。
睡眠の欲求をはね除け起床する。

「やだ、前髪くしゃくしゃじゃない……」

私はそう呟くと洗面所へと向かった。
髪型は私、阿武隈のトレードマークだ。
セットに妥協は許されない。

髪型にはかなりのこだわりがある。
そのためセットするのに時間がかかる。
だから普段は早起きをしなければならない。
それも毎日となると中々の労力を要する。
もっと簡単な髪型にすれば良いじゃないかと思うかもしれないが、お洒落とはそういう物だ。

髪型をキチンと整え、部屋へと戻る。

「今日は何をしよっかなぁ」

いつもの休みなら誰か暇な人を誘って出かけるのだが、今日は皆仕事だ。
一人部屋でゆっくりと過ごすのも悪くは無いが、せっかくなので出かけたい。

「よし、今日は買い物に行こう!」

私はざっくりとスケジュールを決め、外出の準備に取りかかる。
誰に見せるという訳でも無いのだが、ちょっとお洒落な服を着こむ。
女の子の嗜みというやつだ。

「よしっ、準備完了!」

時刻は午前10時くらい。
とりあえず適当な雑貨屋でも見て回り可愛い物を探そう。
部屋から出て、外へと向かう。

寮から出たところで、誰かに呼び止められる。

「あ、阿武隈ー」

「げっ、北上さん……」

私を呼び止めたのは北上だった。
彼女は私にとって天敵のようなものだ。
別に嫌いではないのだが、何故かとても苦手だ。

「阿武隈何してるのー?」

「出かけるところですけど」

「へー、今日は休みなのー?」

「そうです」

とりあえず適当にあしらってやり過ごそう。
まさか付いてくるとは言い出さないだろう。
たぶん。きっと。

「そっかー、どこに行くのー?」

「買い物にですけど……」

サッとこの場を離れないところだが、北上はそうさせてくれない。

「一人なのー?」

「一人ですけど……」

どうも良くない方向に話が進んでいる気がする。
何故か彼女は私にとても親しげにしてくる。
なかなか解放してはくれない。

「そっかー、じゃー私も行くよー」

「えっ!?何でですか!?」

案の定、北上は私に付いてくると言い出した。
彼女も私服なので非番なことは分かっていた。
もっと迅速に話を切り上げるべきだった。

「何でって、いいじゃーん」
「一緒に行こうよー」

「べ、べつにいいですけど……」

北上は私に対しては押しが強い。
一方、私は彼女に弱い。
流れ的にこうなるのは必然だったのだろう。

「なんで私なんですか?」
「大井さんとか居るじゃないですか」

「今日大井っちは仕事だしー」
「阿武隈は嫌なのー?」

「別に嫌じゃないですけど……」

さすがに嫌とは言えない。
そこまで言ってしまうのも可哀想かな、と思ってしまう。

「じゃー決まりねー」
「何買いに行こうかー?」

「雑貨屋に行こうと思います」

「いいねー、何か可愛い物探そうよー」

とりあえずは目的を果たそう。
雑貨屋で可愛い物い囲まれて心を落ち着けるのだ。
別に北上は私に何かしてくる訳では無い。
普通に対応すれば良いだけなのだ。

「じゃあ行きましょう」

二人並んで歩き出す。

「ねー阿武隈ー」

「何ですか」

「何で阿武隈は私に敬語なのー?」
「同じ軽巡なんだから普通に話してくれればいいのにー」

あまり気にしたことは無かったが、確かに敬語だ。
なんとなく一歩引いてしまっているからなのだろう。

「北上さんは雷巡じゃないですか」

「えー、同じようなものじゃん~」
「ねー、もっとフレンドリーに話そうよー」

北上は歩きながら私の髪をくるくる弄る。

「ちょっ、髪は触らないで下さい」
「髪型崩れちゃうじゃないですか……」

北上はよく私の髪を触るが、やめて欲しい。
髪型が崩れるとセットし直すのにも時間がかかる。

「阿武隈はいつも可愛い髪型してるよねー」
「セットするの時間かかるんじゃないのー?」

「かかりますよ」

「私なんて適当に三つ編みしてるだけだよー」

「いいじゃないですか、似合っていると思いますよ」

「本当にー?嬉しいなー」

北上は嬉しそうだ。
そんな彼女を見ていると私も少し嬉しくなってくる。

「ねー今度私の髪もセットしてよー」
「阿武隈、髪いじるの上手そうだしさー」

「別に良いですけど……」

「やったー、嬉しいなー」
「私もたまには女の子らしくしないとねー」

北上はとても無邪気だ。
何故私は彼女が苦手なのか、時々考えるが答えは出ない。

そうこうしているうちに目的の雑貨屋に辿り着く。

「北上さん、ここです」

「おー、ここが阿武隈イチオシの雑貨屋かー」
「私初めて来るなー」

「この辺りは可愛いお店がいっぱいありますよ」

雑貨屋の中に入る。
可愛い物に囲まれている時は心が安らぐ。
北上と一緒にいる緊張感も少しはほぐれそうだ。

「ねーねー阿武隈、これ見てー」

北上が持ってきたのは妙にリアルなカエルのぬいぐるみだった。

「これ可愛くないー?」
「この目とかさー」

「え……それですか……?」
「ちょっとリアル過ぎないですか……?」

可愛くは無い、と思う。
北上のセンスを疑わざるを得ない。

「そーかなー?」
「可愛いと思うんだけどなー」

北上はちょっとしょんぼりして別の物を物色し始める。
そして別のぬいぐるみを持ってくる。

「ねーねー阿武隈ー、これとかどおー?」

北上が持ってきたのは妙にリアルなヘビのぬいぐるみだった。

「きゃっ!?」
「な、なんですかこれは……」

「へびだよー」
「可愛いよねー、このつぶらな瞳とかさー」

「そ、そうですか……?」
「やっぱりリアス過ぎると思います……」

やはり可愛くない。
北上はいったいどんなセンスをしているのだろうか。

「そっかー」

またちょっとしょんぼりする北上。
しかし何かを思いついたかのように笑顔を取り戻す。

「でも、さっきのカエルと一緒に置いたら良くない?」
「弱肉強食って感じでさー、可愛いよねー」

「別に弱肉強食は可愛くないと思いますけど……」

「えー、そうかなー?」
「やっぱりダメなのかなー」

北上は落胆している。
可愛さに自信があったようだ。
何故自信を持っていたのか問い詰めたくなるところだが、気にしないでおこう。

「北上さん、可愛いとはこういう物のことを言うんですよ」

私はでっかいクマのぬいぐるみを北上に差し出した。

「おー、クマじゃんー」
「クマはちょっと特別なんだよねー、私球磨型だしさー」

そう言われてみればそうである。

「嫌いなんですか?」

「全然嫌いじゃないよー」
「むしろ好きかなー」

北上はクマをもふもふしながらそう答えた。
基本ぬいぐるみは好きなようだ。
あまり女の子っぽいのは趣味じゃなさそうなだけにちょっと意外だ。

「阿武隈の部屋にもこんなクマがあるのー?」

「ありますよ」

部屋には昔誕生日に買ったでっかいクマがある。

「えー、いいなー」
「私にも触らせてよー」

「別に良いですけど」

「ほんとにー?やったー」

これは北上が部屋に来るフラグではないか?
可愛さに気を取られていて、その展開は読めなかった。

「じゃー買い物終わったら阿武隈の部屋に行こうー」

「えっ!?今日ですか!?」

「うん、今日」
「休みだしねー」

やはりそういう展開だ。
北上と部屋で二人っきりは何か気まずい。
しかし断るのはさらに気まずいのでうんと言うしかない。

「ダメなのー?」

「いえ、良いですけど……」

「やったー、楽しみにしてるねー」

北上は嬉しそうである。
何故私の部屋に来るのがそんなに嬉しいのだろうか。
北上に好かれるような態度を取った覚えは無いのだが。

「ねーねー阿武隈ー、これみてー」
「14cm単装砲ストラップだってー、可愛いねー」

「いや、別に可愛くは……」

瞳を輝かせる北上。

「はい、可愛いですね」

あまりに嬉しそうなので可愛く無いとは言えなかった。
しかし全然可愛くないという訳では無いから嘘ではない、と思う。

「でしょー、いいよねー14cm単装砲ー」
「私これ買っていこうかなー」

「何に付けるんですか?」

「もちろん14cm単装砲にだよー」

単装砲に単装砲を付けてどうするのだろうか。
でも親子単装砲と考えると可愛いのかもしれない。
段々と自分のセンスに自信が無くなってきた。

「じゃー私買ってくるねー」

北上はレジへ向かった。
私は特に欲しいものは見つからなかった。
ぬいぐるみはもう部屋に沢山あるし。
小物も掘り出し物は無かった。

外で待っていると北上が店から出てきた。
手には小さい紙袋を抱えている。

「おまたせー」
「次はどうしようかー」

「そろそろお昼時ですね」

何だかんだけっこう長い時間雑貨屋にいたようで、すでに正午を回っている。

「んー、じゃあ間宮に行こうかー」

食事といえば間宮である。
もちろん艦娘達に大人気だ。
しかし二人っきりで行くのは少し抵抗がある。
誰かに見られたらどうしようか……

「ほらー、阿武隈行くよー」

北上は私の手を掴んで引っ張る。

「ちょっ!?北上さん!?」
「歩けますから、私ちゃんと歩けますから!」

抵抗するが手を離してはくれない。

「いーじゃん、行くよー」

強引である。
仕方が無いのでそのまま引っ張られて行く。

「ちょっと、恥ずかしい……」

小声で抵抗する。
私の頬は熱を帯びている。
北上はまったく意に介していない。
そのままどんどん進んでいく。

そして間宮に辿り着く。

「んー、やっぱり混んでるねー」

「そうですね、満席でしょうか」

中を除くが席は埋まっているようだ。

「ちょっと待つー?」

「はい」

混んでいるが、少し待てば空くだろう。
入り口のベンチで順番を待つことにした。

「あの、北上さん……」

北上は私の手を握ったままだ。
そろそろ離して欲しい。

「んー、なにー?」
「何食べようかねー?」

「え、決めてません……」

なかなか話を切り出せない。

「やっぱり昼はカレーかねー」

「そうですね、定番です」

昼食に間宮のカレーは定番メニューだ。
訪れる艦娘の半分くらいは注文しているのではないか。

「私は間宮カレーにするよー」
「阿武隈はどうするー?」

「私もカレーにします」

「やっぱカレーだよねー」
「早く席空かないかなー」

やはり手は握られたままだ。
そろそろ、だいぶ恥ずかしい。

「あの、北上さん……」

「んー、なにー?」
「あ、今日は私のおごりだからねー」

「えっ!?大丈夫です、自分の分くらいは自分で出せますから」

「今日は私が付いてきたんだしさー、私に出させてよー」

そう言いながら北上は私の顔を覗きこむ。

「でも……」

私は戸惑う。
別におごって欲しくて一緒に来たわけでは無いのだが……

「まーまー、気にしないでー」

北上は私の前髪を弄びながら答える。
私の手を握りしめながら。

「わっ、わかりましたから……」
「前髪は触らないで……」

「んー、そうそう、素直が一番だよー」

そう言いながら私の髪を撫でる。
北上はそんなに私の髪が好きなのだろうか。
髪型が崩れるからあまり触って欲しくはないのだが……
しかしニコニコしている北上にそう強くは言えない。

「北上さん、阿武隈さん、おまたせしましたー」

間宮がやって来る。
席が空いたようだ。

「おー、待ったよー」
「じゃー席に着こうかー」

北上は私の手を引っ張り席へと向かう。
そして向かい同士に座る。

「間宮さん、カレー二つねー」

「はーい、お待ちくださいねー」

間宮は注文を取ると厨房へ消えていった。

「早く来ないかな~」

北上は相変わらず嬉しそうだ。
そんなにカレーが好きなのだろうか。

「北上さんはそんなにカレーが好きなんですか?」

「んー、ふつーに好きだよー」

「でもすごく嬉しそうですよ」

「んー、阿武隈といるからじゃないかなー」

「えっ……」

私の体が一瞬にして熱くなる。
北上はさらりと恥ずかしいことを言う。
自覚が無いのか、躊躇いが無いのか。

そうこうしているうちにカレーが運ばれてくる。

「カレー、いただきまーす!」
「んー、美味しいね~」

北上は美味しそうに食べている。
私はまだ恥ずかしくて、俯いたまま食べ始める。

黙々とカレーを食べる。
今日のカレーはちょっと辛めだ。
冷めない体の熱もこれでごまかせるだろう。

そしてカレーを食べ終える。

「んー、美味しかったねー」
「ちょっと体が熱いかなー」

「そうですね、今日のカレーは辛めでしたから」

北上も少し汗ばんでいる。

「そだねー」
「体を覚ましに埠頭にでも行こうかー」

「そうですね、海風で涼みましょう」

埠頭は海を眺める艦娘達に人気のスポットだ。
人もそこそこ居るだろうし、何より気持ちが安らぐ。

「んー、じゃあお勘定済ましてくるから外で待っててー」

「わかりました」

外で待っていると北上が出てくる。
手に持っている紙袋が二つに増えている。

「北上さん、何か買ってきたんですか?」

「んー、ちょっとねー」
「それより、行こうかー」

北上はまた私の手を掴む。

「だ、大丈夫ですって!一人で歩けますから!」

「いーじゃん、行くよー」

北上はどんどん進んでいく。

「強引なんだから……」

私は小さく呟く。

北上は普段こんなに積極的ではない気がする。
もっとこう、適当なはずだ。
なんで私には積極的なんだろうか。
理由を考えてみても一向に思い浮かばない。

埠頭に辿り着く。
今日も海が綺麗だ。

「んー、やっぱりここは気持ちいいねー」

「そうですね、風が気持ちいいです」

二人、地面に座って海風に当たる。

「あの、北上さん……」

幸いなことに他に人はいないが、そろそろ手を離して欲しい。

「んー、なにー?」
「そういえば阿武隈はさー」

「え、なんですか?」

やはり話を遮られる。

「阿武隈は私のことが嫌いなのー?」

北上は私の顔を覗き込みながらちょっと不安そうに尋ねる。

「えっ!?何でですか!?」
「べ、べつに嫌いでは無い、です……」

「んー、ならいいんだけど」
「なんか一歩引かれてる気がしてさー」

普段は北上を避けているのはバレていたのだろうか。

「別にそんなことは無いですよ」

「そっかー……」

北上は少し悲しそうだ。
私はとても悪いことをしていたのではないかという罪悪感に駆られる。

「本当に、嫌いではないんです」
「ただ、ちょっと、苦手だなって思っていただけで……」

「んー……」
「ごめんねー」

北上は寂しそうに笑う。

「もう、本当に嫌いではないんです!」
「全然嫌ではないので気にしないで下さい!」

私は少し強めにそう宣言する。
北上の表情は少し輝く。

「そっかー、なら良かったよー」
「嫌われてるんじゃないかと心配しちゃったよー」

「その割には強引ですよね」

「そうかなー?普通だよー」

自覚は無いのだろうか。
でも強引なことに間違いは無い。
現にまだ私の手を握ったままだ。

「手を握りしめながらそう言われても説得力が無いです」

「おー、そうだった」
「すっかり忘れてたよー」

北上は無邪気に笑う。
でも手を離してはくれない。

二人は海風にあたる。
手を繋いだまま。
ゆっくりと時間が流れる。

「んー、そろそろ体も冷めたし戻ろっかー」

北上が立ち上がる。

「そうですね」
「この後はどうするんですか?」

「えー、阿武隈の部屋に行くんじゃないのー?」

そうだった、すっかり忘れていた。
私の部屋は……
昨日片付けをしたから散らかってはいない。

「良いですけど、約束もしましたし」

そして寮へと戻る。

「阿武隈はちゃんと部屋綺麗にしてるのー?」

「もちろんです」

昨日片付けをしておいて良かった。

「北上さんは綺麗にしているんですか?」
「散らかってそうなイメージですけど」

「ひどいなー、ちゃんと綺麗にしてるよー」
「大井っちがー」

予想通りであるが、やはりそうか。

「自分でしてるんじゃないんですか」

「自分でやる前に片付いちゃうからねー」

「まぁ、そうでしょうね」

大井は北上のこととなると行動力がすごい。
部屋の片付けくらいは朝飯前だろう。

そうこうしているうちに部屋に辿り着く。
あまり自分の部屋に人を入れないから緊張する。

「ここが私の部屋です」

北上を招き入れる。

「おー、可愛いじゃーん」

部屋は白とピンクで統一されている。
そして大量のぬいぐるみが飾ってある。

「これがでっかいぬいぐるみかー」

北上がクマに飛びつく。

「ちょっ、北上さん!あんまり暴れないで下さい!」

「いーじゃーん、可愛いしー」

「そういう問題じゃ……」

北上はクマをもふもふしている。
一通りいじり倒したところで起き上がる。

「そうだ、阿武隈ー」
「最中食べよう最中ー」

時間は午後3時を回っている。
おやつには丁度良い時間だ。

「え、うちに最中はありませんよ?」

「ちゃんと買ってきたよー」

間宮から出た時に紙袋が増えていたのは最中だったのか。

「じゃあお茶を入れますね」
「緑茶で良いですよね」

「うん、ありがとー」

北上は物珍しそうにキョロキョロと部屋を見渡している。

「別に変なものは置いてありませんよ?」

お茶を用意し戻ってくる。

「いやー、可愛い部屋だなーと思って」
「女の子って感じだよねー」

「別に普通です」

別に変なものは無いのだが、あまり見られるのも恥ずかしい。

「じゃー最中食べようかー」
「間宮の最中は絶品だからねー」

「そうですね、頂きます」

もぐもぐ。
やはり間宮最中は美味しい。
思わず顔がほころぶ。

「間宮最中、美味しいねー」

「そうですね、やはり最中は間宮に限ります」

最中はどんどん減っていく。
そして最後の一個を食べ終える。

「ごちそうさまー」

「ごちそうさまでした」

「んー、お腹いっぱいになると眠くなってくるよねー」

北上は横になりゴロゴロしている。

「もう、寝ないで下さいよ」

「いーじゃーん、阿武隈も一緒に寝ようよ~」

北上はクマに抱きつきながらうとうとしている。
本当に寝てしまうのだろうか。

「だめですよ、今寝たら夜寝れなくなるじゃないですか」
「ほら、起きて下さい」

「ちぇー、阿武隈は厳しいな~」

北上はちょっと不満そうに起き上がる。

「んー、まだ時間はあるねー」
「どうしよっかー?」

「そうですね、どうしましょうか」

夕食まではまだ時間がある。
しかしまた出かけるのも面倒くさい。
適当に時間を潰すのが良いだろう。

「阿武隈はいつもこーゆー時は何しているのー?」

「誰かと居る時は喋ったりして時間を潰しています」

「そっかー、じゃー私と話そうよー」
「女子トークってやつね」

そう言うと北上は私の隣に移動してくる。

「ちょっ、なんで隣に来るんですか!?」

「えー、女子トークするなら近くないとダメじゃないー?」

別に距離は関係無いと思うが。
北上の常識は謎だらけだ。

「距離は関係無いと思いますけど」
「別に良いですけど……」

「んー、ところで女子トークって何を話すのー?」

何故知らないのに女子トークをしようと言い出したのだろうか。
まぁ、別に女子トークと言っても普通に喋るだけなのだが。

「何でも良いんじゃないですか?」
「好きな事を話せば」

「えー、好きな子と話すのー?」
「それはちょっと私も照れちゃうな~」

「好きな事、です」

事の字が違う、字が。

「あははー」
「そうねー、私は阿武隈の髪が好きだなー」

北上はそう言うと前髪を弄り始める。

「ちょっ、髪は触らないで下さいよ」

「いいじゃーん、もう出かけるわけでも無いんだしさー」

「そうですけど……」

それでも髪型はキチンとしていないといけない。
ポリシーのようなものである。

「ホントに可愛い髪型だよねー」
「女の子って感じで、羨ましいなー」

北上は髪を弄るのをやめない。
そんなに私の髪が好きなのだろうか。

「北上さんもセットしたら良いじゃないですか」
「髪も長いんだし、色々できるんじゃないですか?」

「んー、でも面倒くさいんだよね~」

それを言ってしまってはお仕舞いである。
北上らしいと言えばそうだが。

「それじゃ何も出来ないじゃないですか」

「まー私はそんなに女の子っぽくないしー」
「あんまり可愛い髪型も似合わないからね~」

十分北上は女の子っぽいと思うが。
性格以外は。

「そんなことは無いと思いますけど」
「趣味は人それぞれですし、好きな髪型で良いんじゃないですか」

「そうねー」

そう言いながら北上は後ろ髪を引っ張る。

「ちょっ、髪を引っ張らないで下さい」

「なんかこう、長い髪が綺麗にまとまってると引っ張りたくならないー?」

「なりません!」

「何かレバーみたいでさー」
「こう、クイッとしたくなるよね~」

レバーとは失礼な。
もちろん引いても何も動かない。
いや、顔は動くが。

「全然なりません!」
「失礼ですね」

私は頬を膨らませてそっぽを向く。

「あははー、ごめんごめん」
「別に変な意味じゃないんだよー」

そう言いながら北上は私の髪を撫でる。

「別に良いですけど」

ちょっと怒り口調で答える。

「あの、そろそろ髪を弄るのをやめてくれませんか?」

北上はずっと私の髪を弄んでいる。
髪型が崩れてきた。

「えー、いーじゃん」
「私なんか阿武隈の髪すごく好きなんだよねー」

「なんでですか」

「なんでだろうねー?」
「良く分からないんだけど、触らなきゃいけない気がしてさー」

一体何なんだろうか。
私は北上に髪を触られるのは苦手である。
誰に触られるのも苦手なのだが、特に北上には。

しかし北上は一向に触るのをやめてくれない。
私は何故か北上には強く言えない。

「もぅ、別に良いですけど……」
「好きにして下さい」

抵抗するのを諦める。
そのうち飽きるだろう。

そうしていると北上が私の頭をガシッと両手で掴んだ。

「ちょっ、何ですか!?」

「んー、私、阿武隈を見てると不思議な気持ちになるんだよねー」
「何でだろう?」

北上はそう言って私を見つめる。
私は北上から目をそらす。

「何かこう、吸い寄せられるんだよねー」
「これが遠い過去の記憶ってやつなのかなー」

艦娘は過去の記憶が行動となって現れることがある。
しかし何があったか覚えている訳ではないので、何故かは分からない。

「私もそんな気がします」
「でも、あまり良い思い出ではないと思います」

私は北上に触られるのが苦手だ。
理由は分からない。
だから過去の記憶が原因であるなら、良い思い出ではないはずだ。

「んー、私もそんな気がするなー」
「でも私は嫌じゃないんだよねー」

そう言うと北上は私に顔を近づける。

「ちょっ、近い!近いですって!」

私はとても動揺している。
胸の鼓動が早くなる。
これ以上近づいてはいけない、そんな気がする。

「んー、何故か阿武隈には吸い寄せられるんだよねー」
「不思議だねー」

「本当にやめてください……」
「それ以上は、ダメです……」

私はとても不安になる。
良くないことが再現される気がして。

「んー、そうだ!」

北上は何かを思いついたようだ。
そして私を押し倒す。

「あっ……」
「な、何をするんですか!?」

私は為すがままにされる。
北上が近い。
私の体温が上がる。
頬は紅潮しているだろう。

「良くない思い出なら、良い思い出に書き換えちゃえばいいんだよー」
「名案だよねー」

確かにそうであるが、一体何をする気なのだろうか。

「だから、さ」

北上は私の前髪をかき上げる。
そして私の額にキスをする。

「なっ……」

私の体温はピークに達する。
顔は赤く、湯気が出ているだろう。

「ほら、これで良い思い出に書き換わったでしょ?」

そう言うと北上は私を抱きしめる。

「私、阿武隈と仲良くしたいんだー」
「だから逃げられるのはちょっと悲しいかな」

北上は悲しそうな声で囁いた。
彼女が感傷的になるのは珍しい。
彼女は何も気にせず、動揺しないと思っていた。
今までは。

そう言われてしまうと、私も無碍にはできない。
仕方が無いので北上を抱きしめ返す。

「これで良いですか?」

「うん、ありがとう」

北上は私の肩に顔をうずめながら呟く。
ゆっくりと時間が過ぎる。

私は北上をずっと苦手だと思っていたが、こうしているとそれを忘れてしまう。

暫くすると北上は顔を上げる。

「これでちょっとは阿武隈と仲良くなれたかな……?」

「そうですね」
「なれたと思います」

私は視線をそらしながらそう答える。

「でも目を合わしてはくれないんだねー」

「恥ずかしいからですよ!」
「言わせないで下さい」

「そっかー」

北上は私の頬に手を当て、満面の笑みで答える。

「よっと」

北上が起き上がる。
私は押し倒された体勢のまま、そっぽを向く。
まだドキドキは収まらない。

北上はいつも大胆だ。
そういうところはやはり苦手かもしれない。

「私、なんかすごくスッキリしたよー」

そう言うとまた私の髪を撫でる。

「良かったですね」

私はそっぽを向いたまま答える。
北上の顔を直視できない。

「あははー、阿武隈は可愛いなー」

「なっ、もう、そんなにからかわないで下さい」

「別にからかってなんか無いさー」
「本当のことだし~」

北上はニヤニヤしながら私の顔を覗きこむ。
絶対にからかっている。

「……別に良いですけど」

何故か悪い気はしない。
少し北上に慣れた、のかもしれない。

「じゃー私はそろそろおいとましようかなー」

「えっ、夕食は食べて行かないんですか?」

時間はもう午後6時近い。

「私が帰ったら寂しいのかなー?」

北上はニヤニヤしながら問いかける。

「全然寂しくなんか無いです」
「ただ、もうすぐ夕食の時間だったから」

別に全然寂しくは無い。
全然。

「一緒に食べたいのは山々なんだけど、私今日の夜秘書艦なんだよねー」
「そろそろ帰って仮眠しておかないとヤバいかなー」

「夜仕事なら私なんかと遊んでいたら駄目じゃないですか」
「ちゃんと休まないと辛いですよ」

夜から秘書艦なら、大体は次の日一日秘書艦だ。
前日に休養を取っておかないとけっこうキツい。

「いーじゃん、阿武隈と一緒にいたかったんだから」

北上は恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなくサラッと言い放つ。

「それに適当に昼寝するから大丈夫だよー」

「駄目ですよ、ちゃんと仕事しないと」

北上が真面目に仕事をしている姿はあまり想像ができない。
適当にサボるのはお手の物なのだろう。

「ちゃんと仕事しないともう遊んであげませんから」

「えー、わかったよー、ちゃんとするから大丈夫だって」

北上は少し焦った表情でそう答えた。
いつも北上に良いように弄ばれているので、たまには反撃をしてみる。
やられてばかりでは気が収まらない。

「それなら良いですけど」

「うん、じゃあちゃんと仕事するために帰って寝るねー」
「今日は楽しかったよー、ありがとう」

「別に私は何もしていないです」

「でもありがとう」

北上は嬉しそうに私にお礼を言う。
別に私はお礼を言われるほどのことはしていないのだが。
まぁ、好きなようにはされていたが。

「あ、そうだー」
「阿武隈にこれをあげるよー」

北上は紙袋から14cm単装砲ストラップを取り出す。

「えっ?それは北上さんのじゃないんですか?」

「二つ買ってきたんだよー」
「だから一個あげるよー」

可愛いと言ったから私の分まで買ってきてくれたのか。
ちょっと気を使わせ過ぎてしまったのかもしれない。

「ありがとうございます」

素直に受け取る。
ちょっと嬉しい。
私も14cm単装砲に付けようかな。

「うん、これでお揃いだねー」

北上は嬉しそうに笑う。

「それじゃー行くよー」
「じゃーまたねー」

そう言うと北上は帰っていった。

「ふぅ……」

今日は忙しい一日だった。
北上の行動には驚かされてばかりだ。

だいぶ落ち着いてきたので夕食を食べに出かけよう。
髪を整え直し外に出る。

「今日の夕食は何を食べようかな」

そんなことを考えながら歩いていると、前から大井がやってくる。
彼女は私をものすごいジト目で見つめている。

私は踵を返して全力で逃げ出した。

「あぁ、やっぱり北上さんは苦手ー!」

大井は付かず離れず、追いかけてくる。
私の一日はまだまだ終わらないようだ。

- Fin -


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[ 2015/04/25 21:00 ] 艦これショートストーリー 短編 | TB(-) | CM(0)

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